よだか総研ステートメント

間違いのない目標をさだめ
間違いのない行動によって
間違いのない結果がうまれる

まるで大きな精密機械のように
寸分のくるいもなく設計された
ピカピカな中央制御室
まんなかに一つの椅子

わたしたちは手放しで喜んだ
これで世界は永劫に発展だ
地域の成長に貢献だ
きっとよい暮らしになる

ところが実際はそうならなかった
おおぜいの命運を預かった機械たちは
小さく正しい選択を積み重ねながら
設計図の外側に広がる大きな世界に
投げ出された問題を無視していった

わたしたちは
貧しく感じ
お互いを信じ合わない方がよいと考え
刑罰と警察が増えていった

わたしたちの中のわたしは
われにかえり
割れた声で叫んだ
約束と違うじゃないか

小さな制御室はぐちゃぐちゃに混乱し
大きな機械は口々に喧伝した
学術的な専門家による構想です
百パーセントの安心を保証します
想定外の想定は不可能です

わたしは逃げ出した
たった一つの椅子に搭乗し
森羅万象すべてを担当する
公平善意の責任者に
わたしの自由を押し付けて

 * * * 

最新で、完璧で、間違いのない
設計図からできた機械を
ゆっくりと手放すかわりに

いくつかの視座と問いをそなえて
じっと対峙しながら
来るべき社会を、描きたい

たとえば、<発見する>社会
機械から逃げ出して生き生きと暮らす人々と共に
完璧な設計は最初から不可能であったことと
デザインの前にあった土着の生態を、発見する社会

たとえば、<待つ>社会
こどもの幸せを、先回りして代弁するのではなく
障がい者の利益を、統計から専門的に推定するのでもなく
声にならない声を、静かに待つ社会

たとえば、<分かち合う>社会
病気であると公認してはじめて治療するのではなく
社会を信じられなくなってから福祉を提供するのでもなく
同じ悩みや問いを持った人たちが集まり、温め合える社会

たとえば、<力を生む>社会
芸術、音楽、笑い、運動、対話、伝えること
それぞれの祈り、願い、不満、怒りから
暴力ではない力を生み出し、続いてゆく社会

たとえば、<評価されない>社会
能力を磨いて、勝利を積み上げ、夢を叶えるだけでなく
勝利した人とその仲間だけが勝利を再生産するのでもなく
自分自身の価値を、誰に説明することなく、穏やかに暮らせる社会

 * * * 

宮沢賢治は、こう書いた

日照りの時は涙を流し
寒さの夏はオロオロ歩き
みんなにデクノボーと呼ばれ
褒められもせず
苦にもされず
そういうものに
わたしは
なりたい

よだか総合研究所は
デクノボーのように
ただ、そこにいることの価値を
だれもが分かち合うための
ローカルシンクタンクとして
始動します。

2021年 春
よだか総研