児童虐待予防に関する調査の報告書を公開しました

NPO法人ケア・センターやわらぎNPO法人ひだまりの丘が推進する児童虐待予防事業・子はたからプロジェクトの一環で実施された児童虐待予防に関する調査(2020〜2021年度)に、よだか総研メンバーが参加した。WEB公開版の報告書を本ページに掲載する。

【概要】
2020〜2021年度の調査で、合計42名の虐待被害者と、3名の虐待加害者に対してインタビューを実施し、得られた結果を分析した。その結果、主に以下の結果が明らかとなった。
①虐待を受けた子ども自身が、虐待期間が終わるまで「虐待」だと認識していないケースが、調査対象者の64%存在した。
②虐待を受けた子ども自身が、家庭外の人へ相談する意思を持っていないケースが、同62%存在した。
③虐待が発生した家庭の外側からの支援や介入が、親または子によって拒絶されたケースが、同18%存在した。
④虐待を受けた子ども自身が、社会に対して、どうせ何もできない/してくれない、という不信感を持っていたケースが、同24%存在した。

特に①の結果から、虐待の当事者にとって、 虐待を認識することは困難であることが示唆された。しかし、そもそも当事者以外の人々からも、児童虐待は曖昧なイメージでしか認識されていない。国の児童虐待対応マニュアルとも言うべき「子ども虐待対応の手引き(厚生労働省,2013)」には虐待の定義が記載されているものの、具体的な判断方法や判断基準には触れておらず、リアリティに乏しい。その結果、福祉や教育の専門職でさえも、認識が揃わない、判断が別れる・誤る、といった現象を生じさせている。

今日の福祉行政が主に採用している「ハイリスク家庭を絞り込んだ上で、その家庭に適切な福祉サービスを投入することで、虐待に至る要因を解消していく」というハイリスク・アプローチの方法論は、そもそも漏れなく適切に絞り込むということが極めて困難であること、さらに絞り込みの過程で支援機関への不信や拒絶が発生しうること、という2つの重大なリスクを抱えていることが改めて明らかとなった。 虐待予防を進めていく上で、このリスクを存在しないものとして無視することはできないのではないか。

【報告書ダウンロード】

【メディア掲載】
「先生に言うと親に伝わる」「逃げ出せないと諦め」…虐待の子、半数が相談せず(読売新聞,2021年12月02日)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211202-OYT1T50113/