根尾川むいむいの森ユースセンター「鶏をいただく」 レポート


はじめに
一般社団法人よだか総合研究所は、2023年7月から揖斐川流域の森林を活用した自然体験施設として「根尾川むいむいの森」を運営しています。また、毎週月曜日はユースセンターとして、子ども・若者向けに豊かな体験や安心できる居場所を提供しています。

 今回、ご縁があり、廃鶏をいただけることになりました。廃鶏とは、年をとり、卵を産まなくなってきたために処分される鶏のことです。

 根尾川むいむいの森ユースセンターにて、鶏の屠殺・解体を行い、その過程を記録しました。この体験は、食べ物のありがたさを実感し、いのちをいただく意味を考える機会となりました。ユースセンターの登録者には事前に連絡の上、一連のプログラムを実施しました。

目的
1. 食べているものがどこから来ているのかを知る
 現代では、鶏の生産者が育てた鶏肉をスーパーで手軽に購入できますが、その背景を知る機会は少なくなっています。私たちが普段食べている鶏肉が、どのような過程を経て食卓に届くのかを知り、実際に体験することで、その意味を感じます。
2.昔とつながる
 昔は、鶏を育て、家族や親せきが集まる際のご馳走としていただくことが一般的でした。岐阜の郷土料理「けいちゃん」は、ひねどり(成鶏)の固い肉を美味しく食べるために工夫された料理の一例です。このような昔の文化や知恵に触れ、食べ物との関わり方を考えます。

当日の流れ
1.目的や手順の説明
 初めての子が多いので、丁寧に話しました。子ども達から様々な質問がでました。また「見れない人は無理に見なくても良い」ということも伝えました。
2.鶏の紹介
 鶏をいただくことになった、いきさつをお話ししました。触れる子は実際に手で触れて、体温を感じました。
3.鶏をさかさまに吊るす
 頭に血が上ることでおとなしくなり、血も抜けやすくなります。
4.首の動脈を切り、血を抜く
 スタッフが行いました。きちんと血を抜くことで、美味しくなります。
5.お湯につけた後で羽をむしる
 60度のお湯にさっとつけることで、羽が取りやすくなります。むしった羽は、飾りや釣りの道具としても活用できます。
6.さばく
 スタッフが行いました。内臓は、説明しながら種類ごとに分けました。
7.調理する
 今回は、お味噌汁と塩焼きを作りました。
8.美味しく食べる
 皆で一緒にいただきました。
 お肉が食べられない子は、お味噌汁の汁だけをいただきました。
9.食べられない部分は地球に戻す
 頭や骨、内臓の一部を土に埋めました。

参加した子ども達の感想

  • 皮が硬かった。
  • 悲しい気持ち。
  • 見ていない。
  • 今日は食べていないけど、今後も鶏肉は食べられる。
  • 鶏がかわいかった。
  • 美味しかった。
  • 悲しかった。
  • さみしくて泣きそうになった。
  • 鶏がお肉になることを実感した。
  • お腹が空いた。
  • お墓を作れて満足。花をたくさんお供えした。
  • お墓があることで、命をいただいたことを思い出せる。
  • セージで清められたのが良かった。(※セージは古くから浄化のハーブとされる)

振り返り

朝、鶏に会った子ども達は、思い思いに名前をつけて、一緒に遊んでいました(正確には追いかけていた)。

最初に流れを説明したことで、子ども達はそれぞれ「無理」と感じる工程では距離をとりつつ、自分なりの関わり方を選択していました。もちろん、最初から最後まで積極的に参加した子も何人かいました。

食べられない部分を土に埋めると、子ども達は自然と手を動かし始めました。花を探してお供えする子、木の板に鶏の名前を書く子など、それぞれが思いを込め、やがてそれは小さなお墓となりました。

その日だけでなく、後日もお墓に手を合わせる子の姿があり、いのちを想う気持ちが伝わってきました。

スタッフからは「見ていなくても、食べていなくても、今日この場にいたということは、いのちをいただいたということ」だと伝え、今回の体験を終えました。